令和元年度十和田市立中央病院医報の巻頭言です。ご一読ください。
この度、令和元年度の当院の活動状況をまとめた「十和田市立中央病院医報・第6巻」を発刊致しましたので、お送りさせていただきます。
本誌は「医療の質と経営の質を数値化して読み取れるように」との意図で、学術活動と年報を合体させた内容になっておりますので、ご一読いただければありがたく存じます。
新元号スタートの年である令和元年度ですが、その出典が万葉集ということもあって、当院との縁を感じたのは私だけではないと思います。
実は本誌の裏表紙中央に載せている当院のシンボルである佐藤忠良氏作の「さわらび(早蕨)の像」ですが、この「さわらび」という言の葉が万葉集の歌に由来するのです。
志貴皇子が詠んだ「岩走る垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも」という歌から名付けられており、寒く厳しい冬を越え、待ちに待った春到来を素直に喜ぶ歌で名歌とされています。
令和時代の到来は、当院の希望ある未来を示唆しているのかもしれません。
これを受けてか、令和元年度は当院にとっての朗報がいくつかもたらされました。
まずは、当院が引き続き県内2施設だけになった「地域がん診療連携拠点病院」に指定されたことです。
国の厳しい査定をクリアしたことは、少ないスタッフでありながら地道に努力を重ね、がん診療の質を維持してきた総合力の賜物であり、誇りに思います。
また、昨年度の目標であった「地域医療支援病院の取得」については、その条件が整い県に申請しておりましたが、令和元年10月28日付けで県知事から承認を受けることができました。
念願であった県内6番目の地域医療支援病院となることができたことをお伝えすると共に、紹介・逆紹介等でご協力いただきました地域の先生方に厚く御礼申し上げます。
これで名実ともに、当二次医療圏の中核病院として胸が張れると思います。
さらに、年度目標である「ブランディング~強みを活かして育て上げる~」の一環として「地域へ出向く医療の実践」を掲げました。
その成果として大きかったのが、十和田地域になかった在宅診療のみを行う「十和田市立中央病院附属とわだ診療所」を令和元年10月1日に開所できたことです。
地域医師会の先生方にもご理解をいただきながら開設できたことは、地域のニーズに応えることができると共に、地域共生の拠点としての機能も内包していると考えています。
一方経営については、前年度と比較して医業収入が伸びず医業支出が増加したため、収支としては残念ながら悪化しました。
病院機能の充実が年度内の経営には直結しませんでしたが、医療の質と経営の質のバランスを常に意識し続けなければならないことを学びました。
今後策定を予定している中長期計画に反映させたいと思いますので、これからも更なるご指導をよろしくお願い致します。